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朝明の庭

90年の民家を改修し、新たなものとして甦らせた施主
裏庭として使われていた場所に門扉を新たに構え、駅からの導線に、隣接するお屋敷の美しい石積みを景色に取りこむ。 単独で存在していた家々が急に街並みになる。どれだけ周りの環境を味方につけるかで、随分と風景が変わるものだ。
裏庭で使われなくなった井戸を花台とし、家の脇を長いアプローチとする。シンボルツリーだった桜の大木は、年月とともに樹勢を弱め撤去するかが検討されたが、門扉の位置を変えることによって、アプローチ脇の近景にし、生かす。太い幹の存在を感じながら玄関にたどり着く。

玄関を入ると広い土間廊下が真っすぐ走り、裏の扉を開け放つと、庭の景色が切りとられ、絵のように美しい。視点を変えると、全く違う表情が現れる。
真の豊かさとは何か。それを問うた庭だった。

photo by Hayato WAKABAYASHI