
かつて「八事山」と呼ばれた丘陵地の、閑静な住宅街に庭のショールームを開きました。
時代と共に物事の形が変化するのは当然のことですが、落葉掃除が大変だからと大きく育った木を伐採したり、先代が作った庭を更地にして、コンクリートの駐車場にしたりと、生命の源である土からどんどん離れていく人の暮らし方に危機感を覚えたのがきっかけです。
また、「庭をどこにいけば頼めるのか分からない」という声を耳にすることが多かったので、庭の相談窓口となればとの想いもありました。

元々この場所は、コンクリートで覆われた駐車場とガレージでした。庭だけでなく、屋内と屋外の中間エリアの楽しみ方が提案できるように、シャッターで仕切られていたガレージの軒先に、大きなガラスの引戸を付けて、花壇の一部を室内に取り込みました。室内花壇では観葉植物が元気に育ち、室内で植物を気軽に愛でられるようになっています。
庭は、長い間コンクリートに覆われて呼吸ができていなかった土壌を改良し、常緑樹の中木をメインにした場と、旧鉄平石敷きの場(駐車場)で構成されています。時間が積層されるように、全ては壊さず、土間の一部は残してテラスとし、ガレージの床も当初のままにしました。
室内には、ジュラ紀の大理石の原石をカウンター替りに据え、エントランスホールと、ガレージを繋ぐ躙り口の様な開口部分を新たに造作。棚や扉、水鉢、水場、什器などは、世界各国から集まった素材や古道具などの初原的なものを選択しています。

庭からは、落葉や剪定枝など、沢山の資源が集められます。人が自然の循環の一部にいることを体感し、庭を持つ意味を様々な観点からも感じてもらえるように、落葉コンポストを設置して敷地内循環できるようにもしました。
庭から切った植物を利用した、花士 珠寳氏によるなげいれ花のワークショップや、自然とそれぞれの視点で向き合っているゲストをお招きし、「学びのニハ」という講演会を企画しています。
曖昧でカタチのない、草の根的な活動をする場ですが、庭文化を紡いでいく場所として、変化し活用されていくことを願います。
