Atelier

植物の魅力の一つは、 周りの環境からもたらせられるあらゆる状況を静かに受け入れバランスをとりながら成長、変化し続けることです。風や鳥によってもたらされる多種との混在は、 実生の木々たちの錯乱が発生する事も無く、それぞれが生きながらえる美しくしなやかな世界を創造していきます。この美しい「かたち」を確認することが、私たちの「ニハ」創りの原点です。その過程は、私たち現代社会の歩むべき方向性をも示し、さらには人間が人として生きる道筋までも教えてくれているのではないかと思っています。形あるものは、いつかはなくなり、この世に生を受けたものは必ず死を向かえます。常に変わり続ける私たちの世界にあって、時代を超えて「変わらないもの」「生き続ける庭」とは何かと考えるとき、庭を外から見るのではなく、内から相依的にみることによって、庭は「形」ではなく、生き続ける「こころ」となるのではないでしょうか。土地、空間、生命の力に自分を委ねた時にその場で生まれてくる唯一の物語。それが私たちの「ニハ」創りです。

実生の庭

45年ほど前に20本ばかりの木を植栽しました。今では45本ほどの木々が存在します。つまり半分以上は実生の木々です。それらは、身分不相応の無駄な根を張らないので、幹を太らせ過ぎることもなく、光に向かう、繊細で美しい幹のラインを生み出します。線は細いですが自力ではった根の生命力は強いです。
実生の木々たちが力をつけ始めた頃、人の知識を使って植えられた木々の一部は、病気になって朽ちたり、台風の際に倒れたり人為的に取り除かれたりして、また新たな景色が生まれていきます。
こうしたい、ああしたいと思ってあがいたところで思い通りにはなりません。好きでも環境に合わないものは育たないのです。
偶然の積み重ねから生まれてきた命によってもたらされるものを受け入れ、ただそれらの変化を楽しむこと。これこそが、これからの新しい庭のかたちとなるのではないかと思い、それが、いつかどこかで見た懐かしい風景へと近づくのではないかと思っています。

循環のニハ

先祖が残してくれた二本の大きな楠と竹林。木漏れ日の下には、茗荷や蕗、ドクダミ、熊笹などが地表を覆っています。隣地境界にはお茶の垣根。日の当たる場所には実のなる果樹が。枯れ枝、剪定枝は薪ストーブの燃料に。竹林の竹は箒や垣根の材料になり、春には筍を供給してくれます。刈取った草や落葉はコンポストに入れて土に返し、雨水は溜池に集め、木々や畑の野菜に恵みを与えてくれます。無駄なものは何もありません。人が自然と関わって共に豊かになっていくこと、自然の循環を感じられる場所。これが私達のニハです。

オープンアトリエ

普段アトリエは非公開ですが、年に1度、4月末頃に予約制で公開しております。弊社の理念を実践している「実生の庭」「循環の庭」を見学していただけますので、3月頃のSNSでの告知をご覧下さい。

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