Works
山の手の庭










茶の湯をたしなむ施主
ゾーニング計画から携わり、庭を中心に窓の切り取り方、玄関の位置、向きまで建築家、お施主と何度も協議し構成した。
柳ゆれる坂下の門をくぐると、家の壁沿いに黒溶岩敷きのアプローチが続く。北に位置する玄関前には、既存の柿木がありその足元に蹲。15枚の溶岩の小端立ての延段が躙口へ向かう結界となる。
躙口ではなく玄関を入ると、琉球畳の床の延長に御影石の濡縁、その向こうの南の庭に、古材を使った石の待合。南の庭の蹲は馬酔木の葉先からの水滴が筧となる。
伝統とは昔のセオリーや形を保守的に守っていくことではなく、過去からの形を現代というこの場で人を介在させて展開させ、次代へ精神を語り継いでいく事だと考える。
毎朝ハサミを持ち、庭に接する時間を持つお施主のこの庭は、いつお邪魔しても美しく、形にとらわれない精神性は、時間を超えて心の庭となっている。
photo by Hayato WAKABAYASHI