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一色のニハ

海岸から山手に向かって細い路地を入った先に広がるこの邸宅は、裏手に山を背負う魅力的な場所である。

玄関口まで3メートルの高低差がある前庭には、塩害に強く、四季折々の花をつける樹々が出迎える。足元には裏山で海の様に広がるノシランを植え、裏山のノシランの海に丁寧に景色をつなげていく。

高低差は旧鉄平石の大階段で解消し、玄関前のポーチにはガラスの屋根をかけ、人が訪れた際に土足のまま集える場とした。

部屋からダイニングを抜けると、裏庭が広がる。山手では貴重な平ら面を創出し、住み手が楽しむための間とした。法面には実のなるものを植栽し、建物から一番遠いところに畑のスペースと、コンポストを設けた。

生き物の暮らしは太陽の光、空気、水、土などの要素に支えられ、影響し合いバランスをとって成り立っている。この自然と生き物の大きなつながりの中で人々も生きている。人がそこに暮らすことでその周辺環境に悪影響を及ぼすのではなく、人も生態系の一部として自然の中で生かされていることを理解し、いつか私達が作った前庭が裏山のような多種多様な生物が住める場になることを願う。

photo by Tadayuki MINAMOTO