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主税町の庭 -森に棲む-














縁あって庭の為に取得された縦長な敷地には既存の樹木が繁茂し、伐採するかどうか躊躇されていたが、これを生かしながら、新しい庭に溶け込ませた。
アイレベルを低くさせた居間に座れば、目の前のテラス越しに下草類が一面に広がる。グランドレベルから上を見上げれば山法師、クマノミズキ、アカシデ、カリン、シマトネリコ、オガタマの雑木類の緑が広がる。花が咲き。実を結び、木々の足元には鳥や風が運んだ一人生えの新芽が顔を出し、野趣に富んだ風景が展開し始める。
あるがままの混在を受け入れ、花ならただ咲いて散っていく。植物の環境への対応能力や生命力は力強く、新しい植物相がこれからどんな変遷を経てゆくのか楽しみである。未完成を前提とした庭が完成に向けて常に変化し続ける。
時が流れ、風が遊び、光が躍る。そして日々の喧騒を離れ、都市の中の森に暮らす。お気に入りの椅子に身を委ね、静かな木漏れ日、上質な時間が流れる至福の時、こころが自由に解き放たれたれる一瞬。
庭が具象から抽象になり、光の中に再び溶け出してゆく。
photo by Tadayuki MINAMOTO